鼈甲(べっこう)をはじめとする
プレミアム・グラスの世界

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べっ甲とは

鼈甲(べっこう)

べっ甲とはタイマイと呼ばれるウミガメの甲羅から得られる鱗板(うろこいた)の部分を示します。

色の明るい、黄色の部分が多いほど価値が高いとされ、1頭のウミガメからは大ヅメとバサヅメというわずかな部分からしかとれません。

中でも、何百頭に1頭の割合で甲羅のごくわずかな部分に、透き通る程薄くきれいな「抜き甲」と呼ばれる素材がありますが、現在ではフレームを集めるだけの材料を得られることは極めて困難です。

逆に、黒甲といわれる黒い色のみの素材も希少価値があり、中でも全く光を通さない真黒甲はトロ甲や中トロ甲より価値があるとされていますが、やはりオレンジ甲、白甲、のほうが価値は高く、抜き甲には遠く及びません。

べっ甲の歴史と技術

「べっ甲細工」の歴史は古く、もとは中国から伝来したというものと、ポルトガルあるいはオランダの技術を長崎平戸の細工師が習得したという説があります。国宝正倉院の中にも遣隋使が持ち帰ったとされる、べっ甲を用いた美術品があります。

国内において眼鏡に使われた例として有名なのは、江戸初期の徳川家康の眼鏡です。


「琉球細工」の第一人者
青山晃雲氏

べっ甲は水と熱、そして加圧のみで貼り合わせ加工がされます。異なる色や素材のべっ甲を貼り合わせる琉球細工には独特の文化の美しさがあり、素材を切り出しては乾燥させてつなぎ合わせる工程を繰り返すことから、膨大な時間と手間がかかります。加工にはとても繊細な感覚が必要とされ、精緻な技術を要する琉球細工をはじめ現代的なデザインやアイデア、新しい技術を取り入れたフレームは優れた匠の手仕事でなければ創り出すことができません。また、素材そのものもタイマイの保護のため商業取引は原則禁止され、現在では禁止前ストック分などのものしか入手できない状況です。

素材も入手困難で、職人も希少であり、長い年月の訓練と高度な技が求められる鼈甲細工のフレームは、格別の存在感を放つ逸品と言えるでしょう。

べっ甲の利点

べっ甲は、生きた素材です。眼鏡の鼻あてなどは人の体温でわずかに変化するため、かけた人の形にゆっくりとなじんでいきます。
また、繊維には方向性があり、汗にぬれてもずり落ちにくい、すべりにくいなどの特長が非常に高価な素材のゆえんとなっています。
水分を吸う素材ですから整髪料は避け、清掃はから拭きで行わなくてはなりません。
古くはかんざし、くしなどの工芸品とされてきたべっ甲ですが、今ではさらに貴重な存在となってます。

  • 鼈甲眼鏡(市松)
  • 鼈甲眼鏡(オレンジ)
  • 鼈甲眼鏡(緑)